うめちゃんからの手紙 2019 No.141 人間の感覚そしてその記憶

うめちゃんからの手紙 2019 No.141

夏休み中のうめちゃんとヒロシ君。

うめちゃんからの手紙 2019 No.141

日本へ帰国する日が迫る中、以前お願いしていた取材先に今日はお邪魔してきました。
何度かお伝えした通り私は違う時代の叡智に触れる事が好きで、生涯を通じたライフワークにしたいと考えています。
昔のお料理レシピを現代に蘇らせてみる、古いレコードを高音質で聴いてみる、フィルムカメラでデジタルに負けない綺麗なプリントを作る、e.t.c。
以前御誘いいただきお願いしていた家電やおもちゃを修理しているボランティアの方達のお茶会を取材させていただきました。

当時より精度の高い現代の修理器具と測定装置や蓄積されたノウハウで故障したものを治すと当時以上の性能が発揮できるパターン、逆に精度を出して組み上げるとなぜか当時の性能が発揮できずムラが出てしまうパターンなど興味深い事例を実物を見せていただきながら解説していただきました。
カセットデッキなどの修理でもゴムベルトを変えたりグリスを変えたり、モーターを交換したり、歯が欠けたギアを作り直したりと色々な修理があるそうなのですが、ゴムベルト一本にしても当時と全く同じ柔軟性の物は用意できないそうで他の箇所で調整したりゴムベルトが将来劣化することなども考慮して調整したりと奥が深いのだそうです。
そしてパラドクスのような葛藤が毎回あるのだそうです。
当時そのままに治して仕事を終えるべきか、使われているパーツや材料が本来出し切れた性能がきちんと出し切れるようにして治してあげるべきか試行錯誤するのだそうです。
性能を出し切れないようにわざと設計されている理由もあるそうで、それは冗長性であったりパーツの寿命を長持ちさせるためにあえて精度を落として作られているのだそうです。
その他にもぬいぐるみが破れて綿が出てしまったものを治すと言う一見簡単な修理も奥が深いそうで、昔と今では綿がポリエステルのものになっていたりと弾性が異なり縫い合わせた後に抱き心地が変わってしまうと人間の感覚に違和感として出てくるものなので機械より修理が難しいそうです。
これはカメラなどの修理にも言える事で人間の感覚そしてその記憶を相手に修理するというのは大変な作業です。

以前私の母が具合の悪かったレンズをある業者に調整に出したところ研磨され返却されたそうなのですが、新品当時よりもくっきり高性能なレンズになって返却され戸惑ってしまった事があるそうです。
母が言うにはカメラのレンズでも古いものだと設計図通りには作られておらず、個体ごとにレンズの厚みが違ったり余裕を持って後世で修理ができるようにあえて大雑把なつくりのものもあるのだそうです。
当時の工員さんが決して手を抜いていたわけでも製品チェックが適当だったわけでもないと思うので、優しく言えば味付けの仕上げが今と昔では違うのです。

お料理でもよくあることですが、10年という短いスパンでもお野菜の味がガラリと変わったと実感する事があります。
一言で言うとえぐみや青臭さ、酸っぱさなどが弱まり甘い野菜が年々増えている気がします。
キュウリやトマトが特に顕著です。

日本のイチゴやブドウが海外に無断で持ち出され現地で栽培されている事が取りざたされた事があります。
食品も知財としてみた時に日本の苦労の結晶が盗まれた事には怒りを覚えますが、安易に他国の品種を持ち込み在来種を淘汰してしまうのも如何なものかと思います。
野菜や果物にも流行り廃りがあり、流行りに乗って他国の品種を持ち込み在来種が数を減らしてしまうは大きな間違いで浅はかです。
人間がいたずらに生態系に流行を持ち込んではいけないと思うのです…

当時のレシピ通り作ると当時よりも早く柔らかくなったり、お肉にしても現代と当時では処理が違いますから灰汁の出方も違えば出汁の雰囲気も変わってきます。
100%当時と同じ味を再現しようと思うと当時の味をしっかり覚えている人と同じ処理がされた野菜やお肉を準備する必要があり、大ごとになります。
だからこそ楽しさもある気がします。
難しく答えがない事なのかもしれませんが…

うめこ


今日の一枚

EOS40D

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Timing~タイミング~ / BLACK BISCUITS


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