うめちゃんからの手紙 2019 No.038 田を分けた、たわけ者。

うめちゃんからの手紙 2019 No.038

心優しく利発な田中さんと、兄猫ヒロシが焼いた焼き芋を勧める二郎。

うめちゃんからの手紙 2019 No.038

今日ははるちゃんが歯医者に行く日だったので私1人の勤務でした。
気が早いですが9月から新たに人を雇う計画が入っていて、なんと私が面接しなければいけないことになっています。
まだ半年くらいありますがトレーニングや研修期間が長いので遠い話でもありません。
マスターがおっしゃるには累積勤務時間から割り出した序列だと女将さん、マスター、私、健一さん、はるちゃん、娘さんなのだそうです。
新しく人を雇う時は私と女将さんが面接を担当しなければいけないようです。
気がついたら長いこと務めておりました。

長ければ良いと言うわけではなく、やっぱりはるちゃんの方が豆の販売数なども多く私にはかないません。
私が入社した当時はマスターを除いて私しか英語で接客が出来るバリスタはいませんでしたが、ここ数年ではるちゃんの英語力もメキメキと伸び、1人で完璧に英語でも接客ができるようになりました。
焦りを感じますが私なりに頑張るしかありません。
一応私がはるちゃんの上司という事になっていてお給料もはるちゃんよりも少し多くいただいているので、重責です。

田中さんが知覚過敏になってノイローゼ気味だとおっしゃっていました。
田中さんもはるちゃんとおなじ矯正歯科に通っているのですが、通い始めた頃にブラッシング指導があり、以来真面目に歯を磨いてきたそうなのですが、おそらく気合を入れて磨きすぎていたのが原因だと考えているそうで、歯列矯正で過敏になっている歯も相まって大変お辛いそうです。

カフェにお子さんを連れて休みに来てくださる常連ママさんがいらっしゃるのですが、その方が歯にまつわる痛みの方が出産より辛かったとおっしゃっていました。
出産にまつわる痛みの方が統計的にも多いのではと思うのですが、とにかく歯の痛みにはめっぽう弱いのが人類で、歯の痛みほど耐えがたいものはないという方も一定数いらっしゃるようです。

ペインクリニックで働いてらっしゃるはるちゃんのお父様がおっしゃるには三叉神経痛や顔面の痛みで診察する人の中に実は知覚過敏や歯髄炎が原因であったり副鼻腔炎などが原因の痛みが歯や顔など他の部位の痛みに飛んで出ることがあるから単純な痛みというものは存在せず侮れないのだとおっしゃっていました。
興味深かったのがプロフェッショナルである歯科医師や歯科衛生士でも知覚過敏になる方がいらっしゃるそうで、歯ブラシの仕方以外にも加齢であったり食いしばりであったり、色々な要因があるそうで単純に不適切な歯磨きだけが原因でなるというものではないのだそうです。

健康に気をつけていても加齢とともに痛いところや不自由になるところが増えていくのが人間です。
考えれば考えるほど暗い気持ちになりますが、これは昨日今日人類が被った事ではありません。
先祖も、そのまた先祖も、ウホウホマンモスを追いかけていた時代の人類だって痛みとともに暮らしていた事でしょう。

都内の新しい建物や郊外のおしゃれな美術館などを訪ねた際に怒りや呆れのような感情を抱くことがあります。
あまりにひどく記憶に残っているのが、美術館前バス停が丘の頂上にある美術館から500メートル弱降ったところに設置されていたり、トイレの看板がわかりにくく、休憩できるベンチが設置されていなかったり、そしてバリアフリー対策のために億という金を投じたにも関わらず車椅子での利用が極めて困難な狭いガラス張りのエレベーターが設置されたりと、散々な実情を見たことがあります。
それらに関わった人たちの多くが自分達も体が弱くなるということを想定していないのではないでしょうか。
山を切り開き木を切り倒し、田を分け潰してまで人の痛みを無視して建てられた施設にわざわざ赴いてまで美術には触れたくありません。

どんな人間でも弱者になる日は必ずきます。
公共施設などであまりにも想像力に乏しい現状を見ると悲しい気持ちになります。
美術の素晴らしさのひとつに他人の考え方、気持ち、感覚、そして痛みや悲しみなどを作品を通じて学び、自分自身の考え方や問題と比べ、そして人間同士の繋がりが再認識できるという一面もあるのではないでしょうか。

痛みを知らないということは悲しいことです。
痛みがあるということで体の部位の存在を再認識できているとも言えます。
まったく痛みを感じないという状態は往々にして末期で取り返しがつかない状態だったということが多い気がします。
自分の痛みですら目をそらしがちで、意識をそらしてしまうのですが、人の痛みや悲しみというのはさらに難しいものです。
難しかったり見えないからといって存在しないものではないのです、確実に存在し誰もが持ちえるものなのです。
でもそれらも目に見えるのであればありがたいことなのかもしれません。
長期間痛みをこらえ、それが怒りや憎しみに変わった人間は恐ろしい結果を招く気がするのです。

自分の痛みに耳を傾け、人の痛みや悲しみに気づけるような、
観察力や素直さを大事にしていきたいものです。

うめこ


今日の一枚

Sony Ericsson K770

Sony Ericsson K770 / 10年前の2月のロンドン。


今日の一曲


竹原ピストル-『LIVE IN 和歌山』


今日の一冊

私がオバさんになったよ
ジェーン・スー (著), 光浦靖子 (著), 山内マリコ (著), 中野信子 (著), 田中俊之 (著), 海野つなみ (著), 宇多丸 (著), 酒井順子 (著), 能町みね子 (著)

少し前にジェーンスーさんと伊集院光さんが散歩した時のラジオ音声を聞いたのですが本当に楽しかった。
またやって欲しいなぁと思いました。

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