うめちゃんからの手紙 2018 No.191 まずい母の味。

うめちゃんからの手紙 2018 No.191

スーパー買い出し大臣のはるちゃん。誕生日会用の食事の材料とバゲットを買ってきた帰り。

うめちゃんからの手紙 2018 No.191

今日は田中さんの誕生日でした。
事前に田中さんから誕生日に食べたいものを伺っていたのでパーティ大臣の私が責任を持ってお料理を用意しました。
お腹いっぱいまるごとバナナを食べたいとおっしゃっていたのではるちゃんとマリーちゃんと私でスポンジ生地から焼き、バナナを包み手作りしました。
バナナだけではつまらないと思いイチゴやマンゴー、キウイなども包みフルーツラップをいくつか作りました。
そしてイギリス滞在中に私が時々作っていたシュニッツェルが大好物になってしまったとおっしゃっていたので同様にたくさんのシュニッツェルも作り、みんなでたらふく食べました。
過去3ヶ月で最も高カロリーな食事を摂った日だった気がします。

田中さんは丸ごとバナナには思い出があるそうで、亡くなられた田中さんのお母様が昔作ってくれた雑でどちらかというとまずい丸ごとバナナが思い出の味なのだそうです。
懐かしい味を再現しようと自分でチャレンジすると美味しくできてしまい”あの下手っぴだった母の味”が再現できないのだよと笑っていました。
安直ですが、田中さんが幼少期に食べていたお母様手作りの丸ごとバナナに使われていた生クリームと今スーパーで手に入る商品の質が変わったからではないかと推理しています。
昔のケーキがバタークリームが多く風味が大きく異なっていたような、そんなことなのではないかと踏んでいます。
他の可能性としては田中さんが子供だったので成長とともに味覚が変わった可能性、そしてお母様ががんで亡くなられたと仰っていたのでお母様の味覚が終末期で変わってしまっていたのかもしれません。
それか単純に思い出の中で曖昧になってしまったのか…
私が鴨川食堂に出てくる鴨川こいしちゃんであれば力になってあげられる気はするのですが、私には経験も見識も足りません。

田中さんはお料理がとても上手です。
そんな田中さんは「意外と美味しいお料理って記憶に残ることは稀で、まずかったーって記憶って残るものだよね。自分に優しくしてくれた人の恩は忘れてしまいがちなのに意地悪してきた人の事はずっと頭から離れないような。悔しさの記憶って強いんだろうなぁ」とおっしゃっていました。
そのあと田中さんは
「せっかく美味しいお料理とデザートを作ってくれたのに文句をつけたみたいでごめんね。」と言い笑うのでした。
田中さんの瞳はいつものようにずれたメガネの奥で嬉しそうに輝いていました。

漢詩と英語で一つづつ作者不明の格言が頭に引っかかっているものがあり、田中さんが日本に帰ってから一緒に作者を探してくださるという話になりました。
一つはシェークスピアの格言だったような気がしているのですが、”平安の中食べる質素なスープとパンは不安を抱えながら食べるご馳走に勝る”といった感じの格言なのですが全く思い出せません。
カーネギー名言集のような世界中の有名な格言を集めた類の本がある気がするので日本に帰国したら神保町を探してまわろうと思っています。
私は世界各国の食べ物にまつわる格言のリストを作っています。
ネタ帳的に色々な食べ物にまつわる格言やことわざを集めておくことで職場で出しているZineに活かせる日が来るかもしれないからです。

食について考えることが本当に多い今夏でした。
食べるということは生きるということなのですが、同時に死への歩みへの一歩でもあります。
食べるという行為が日常にパンクチュエーションを打ち日を終え次のページに送ります。

田中さんと日本に帰ったらメガネ屋さんと本屋さんに一緒に行く約束をした夜でした。

うめこ


今日の一枚

EOS 6D / EF24-70mm F4L IS USM

撮影地:ベトナム / EOS 6D / EF24-70mm F4L IS USM


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