うめちゃんからの手紙 2018 No.116 一太郎さんの企業秘密。

うめちゃんからの手紙 2018 No.116

二郎にGW中はどこかに連れて行ってくれとせがまれるうめちゃん。

うめちゃんからの手紙 2018 No.116

今日も学校の後に焙煎工場にはるちゃんと出勤してきました。
昨日でほぼ全てのシルクスクリーン印刷とペーパーカップへのスタンプ押しを終えていたので、今日の作業内容は店頭で配布しているコーヒーについてのZineの製本作業と壁新聞の印刷などをしてきました。

今まで私がどのように壁新聞を作ってきたかという話はした事がありましたが、私以外の人達がどういったもの一緒に作ってくださっているのかを少しだけ紹介しようと思います。

毎号連載されている企画

ー表面
・私やはるちゃんが知り合った人へのインタビュー記事
・弊社の豆を使ってくださっているレストランなどの紹介記事
・女将さんの焙煎日記
・マスターのコラム

ー裏面
・数独
・クロスワードパズル
・ヒロシのイラスト
・新商品やグッズ販売の注文用リスト

上記の8つは毎号必ず紙面の定位置に掲載されます。
フォーマットが決まっており、基本的には繰り返しなのでとにかく頑張るだけです。
女将さんの焙煎日記とマスターのコラムは秀逸な記事を選びZine用に再編集して出版もしています。
後は不定期で常連さんや女将さんの知り合いの作家さんへインタビューをしたり、時々投書を紹介したりすることもあります。

二つ前の号で一太郎さん夫妻にインタビューさせていただいきました。
マンガ制作者として、若者の感性に共鳴する作品をどのようにつくりあげているのかをテーマにインタビューをさせていただきました。
壁新聞を発行するようになってから今までで私が最も好きなインタビュー記事でもあります。
一太郎さんの感性がどのように育まれてきたのかというお話がとても印象深く、私の心にも響きました。
一太郎さんは大人になるにつれ感性というものは拡張されなくなってしまうのではないかと思っていたそうです。
ところが奥さんと出会ってから、また新しく絵の具のパレットが大きくなったと感じる瞬間があったのだ!とおっしゃいました。
一太郎さんは東京生まれ東京ど真ん中育ち、奥様は千葉県の港町育ち。
お二人の生まれて育ったてきた時に嗅いできた匂い、食べ物、見てきた空の色、聞いてきた音は違うのだけれど、どのようにマンガの上で恋愛という感情の難しい表現を読者に伝わるように精錬してきたかというお話です。

例えば私は海の匂いよりも琵琶湖の匂いを最初に嗅ぎました。(少なくとも私の記憶の中では。)
初めて嗅いだ琵琶湖の匂いに、不思議と磯臭さを感じ、海もきっと似ているに違いないと思ったことを覚えています。
そして実際に海に連れて行ってもらった時に嗅いだ匂いも私に磯臭いと感じさせたのでした。
でも琵琶湖の磯臭さも決して偽物ではないと思うのです。

一太郎さんは夜の空にネオンの反射を見て育ち、一太郎さんの奥様は空港に向かう飛行機や船舶の明かりを夜の海に見て育ったそうです。
一太郎さんは磯臭さを父親に連れられ海釣りに行った時に初めて認知し、奥様は逆に地元を離れ他所の海辺の町に行った際に異なるけれど懐かしさを想起した際に磯臭さを認知したとおっしゃっていました。
ずっと海に近いところで暮らしていた奥様にとってそれは磯臭さではなく、生活の中に当たり前にある日常の匂いだのです。
一太郎さんにとっては日常ではなく休日に父親と嗅いだ匂いなわけです。
奥様にとっては実家を思い出させる匂いであり、一太郎さんにとっては父親との休日を思い出させる匂い。
外国人との恋愛、関西と関東の遠距離カップル、年の差カップルなどをテーマにした恋愛マンガがある理由も常識などの育つ時に身にまとってきたモノの差異が表現に取り入れられた時に旨味として出るからなのだそうです。

同じ夜だけれど見ていた光るものは違ったわけです。
失恋のシーンで寂しく夜空を見上げるというクリシェとも言えるシーンの描写が必要になった時にそのクリシェはある種の記号でもあるのですが、どこまで常套句的表現を使っていいのか葛藤することが必ずあるのだそうです、抽象的すぎると人によって思い浮かべる夜空が違って、都会の夜空と港町の夜空では意味が異なってしまうからなのです、かといって具体的過ぎても没入感のようなものを削いでしまうのかもしれません。
独自のマンガ表現やストーリーの前後との整合性など、他にも考慮しなければならず、難しいのだそう。
恋愛の失恋を日常と捉えるか非日常の出来事と捉えるかも大事なのだそうです。

主人公達にとっては非日常の出来事でも、周りの風景はオフィスであったり学校であったりと普遍的なことが多数派です。

富士山の頂上で破局するカップルの恋愛マンガはそうそうないように思えます。
途中は割愛しましたが…そのような例え話を交え、
「ご来光を見たカップルがそこで区切りをつけ、登ってきた時と下山する時は別々というのも叙情的で美しさがあって、マンガだからできる表現かもしれない。マンガで日常を忘れたい読者もいるわけだしね。自分では体験できないことを疑似体験したい気持ちもある、もしくは捻くれた目で見て心の中で笑いたい人だっている。反対に自分の境遇に似たストーリーに自分を重ねたい人だっているはず。すごく難しいのだけれど、ここから先は僕の企業秘密でもあるし永遠の修行のテーマでもあるよ」と最後は締めていました。

壁新聞の紙面には全て掲載できませんでしたが、「感性は自分の過去の思い出と照らし合わせるようになった時に完成してしまうのですか?」というはるちゃんの鋭い問いかけに対し一太郎さんは…

「答えはイエスでもあるし、ノーでもあるよ。食べ物にしたって味覚は変わるし、目が悪くなれば見える景色も変わる、許せないことは一生許せない事もあるし、嫌いだった奴が好きになることもある。恋愛をしたりするたびにこれらはぐらつくんだよね。とても愉快だと思う。あんなに大好きだった音楽が嫌いになったりね。こればっかりはトライアンドエラーだよ。奥さんと結婚してxx年経つけど未だにドキドキとワクワクはあるもの。高いお寿司屋さんに二人で行くだけでカッコつけようとしちゃう僕だから。」と可愛らしいお答えをくださいました。

これからも色々な人のお話を聞いていきたいと思います。

明日からは休みなので二郎と三郎を連れてどこかにお出かけしてこようと思います。
写真を撮ったり鉄道を見に行ったり、そんな感じになると思います。
お天気になる事を願うばかり。

うめこ


今日の一枚

PEN-EF D.Zuiko 28mm F3.5 / AGFA VISTA PLUS 200

PEN-EF D.Zuiko 28mm F3.5 / AGFA VISTA PLUS 200


今日の一曲

Joe Hisaishi – Summer (Kikujiro)

久石譲 – Summer


今日の一冊

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