うめちゃんからの手紙 2017 No.130

考え事をするうめちゃん

食べ物について考えた1日でした。

マリちゃんがサマーハウスを去った後はヒロシがマリちゃんの後を継ぎ農園でアルバイトをしています。

ヒロシはイギリスに来るまでこれといった農作業の経験はなかったのですが、土をいじる作業がとても楽しいようで毎晩夕飯の際にすごく上機嫌にどんな作業をしてきたか報告してくれます。

少し前に祖母が見せてくれた「未来の食卓」1)というドキュメンタリー映画を観た影響もありヒロシも以前にも増して自分の口に入れるものについて真剣に考えるようになったようです。

祖母の農園は全て私有地で利益目的で運営していないので完全有機農法を維持できているのですが、商業的に利益を考えお仕事として農場を維持していく場合のオーガニックだけでは難しいという事実などをヒロシや祖母とも色々話をしました。映画の中ではオーガニックのポジティブな面を中心に触れていて、オーガニックに地球上の全ての農家が移行すれば温暖化や食糧難などの問題も解決される…ユートピア的に夢物語的に語られていて、私も映画の中に出てきた人たちみたいに私を含めみんなが志を高く持ちそのように世界が変わっていけばいいのだと強く願ってはいるのですが、現実問題として種の入手から出来上がった農作物の販路とその流通、それに伴う卸先との交渉、近隣農家や同業者との派閥など色々なしがらみを考えると農家の人たちに法律改正のような形でオーガニックしかあかんで!と圧力で迫るのもきついのやろうとも思いました。今までオーガニックではなかった畑をオーガニックに切り替えていくまでにかかる期間やその移行期間2)の間の収入をどう確保していくかなど、難しい事もとても多く言うのと実行に移すのは本当に大変なのやろうなと。

はじめおじさんに以前連れて行っていただいた千葉県の自家採集3)の農家の人達からも多くの事を学びました。

今まで私が見た農地で最も驚きだったのは祖母の農園に似ていた農地で、そこは全ての野菜達がアロットメントのような区切りではなく好きな場所で他の種類の野菜の横ですくすくと育っている農園でした。碁盤の目のような列に同一種が並んでいるわけではなくパッチワークのように散らばっているのです。

収穫の際はとても大変なのでしょうが力強さを感じる、とてもリラックスできる雰囲気に包まれた畑でした。

そこの方の話では農地が痩せないように、大雨や水害があった際にも強い土壌を育てていくことを一番に考えていて、その次にやっと美味しい野菜を作ることを考えているのだそうです。土壌の管理と次の世代に残していくことを第一に考えることを最重視されている方でした。

まだまだわからないことが多く私もヒロシも出会ったものに対して驚くことしかまだできていませんが、今できることは見聞きしたことを記録し、少しでも自分の考えをまとめるために参考にできるように将来のために継続して記録しておきたいと思いました。

はるちゃんにとっても驚きが多く終始カメラで記録を撮っていました。

私の祖母の家と私が東京で下宿しているはじめおじさんとたまえおばさんの家の台所事情に出会ったことがはるちゃんにとって何かのきっかけになったそうで、以前より自分で自炊してみることが増えたそうです。

衣食住にこだわりを持ちきちんとひとつひとつを大切に毎日を過ごしていくことが幸せへの道なのかもしれません。

まだまだ不勉強やなと猛省した1日でもありました。本当に色々なことを毎日考えなければいけないのですね。

うめこ


作中で紹介した作品

画伯のおすすめDVD

未来の食卓のDVD

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72時間のストリーミング期間で500円なので余裕を持って視聴できるかと思います。


画伯の追記

僕が学生時代過ごしたヴァーモント州の高校も学校の敷地内で牧場や鶏小屋そして農地を有していました。農地ではトウモロコシや様々な野菜を育てていたのですが、そこで働くすべての職員の方達が全面的に有機農法を肯定をしているわけではありませんでした。特に乳牛を育てる場合当時のアメリカの事情で現在はどのような状況かは把握していないのですが、オーガニック認定を受けるためには乳牛が病気になった際の治療に使える抗生物質などに制限があり牛の健康を考えてみてもオーガニックが全て正義ではないと親しくしていただいた女性職員の方が話されていました。その農場では牛も馬も厩舎や牛小屋に縛られておらず、寝ている時間以外はいわゆるフリーレンジで放牧され好きに牧草を食べたり歩き回ったりして育成されていました。

オーガニックの野菜を感謝して食べている僕たち自身も病気になった際や親知らずを抜いた際には抗生物質を飲むのですから体自体はオーガニックではないですものね。自分たち自身ができないことを牛乳を提供してくれる牛さん達にも求める権利は僕らにはない気もします。難しいですね。

References

References
1 2008年に公開されたフランスのドキュメンタリー映画で、バルジャック村に住む住人の方達が村をあげて老人用の食事の宅配から学校給食まで全てをオーガニックに切り替えていくというチャレンジに密着したジャンポールジョー監督の作品です。108分)
2 翌年から農薬をつかわなくなってもすぐにはオーガニック農園を名乗れないのです。定められた期間農薬を使っていない農業を継続して初めて認定を…詳しくはこちらから http://www.organic-cert.or.jp/about_JAS.html
3 育った野菜から取れる種をまた植え野菜を育てることです。当たり前のようですが意外と子孫を残せない種を持った野菜が多いのだとか。こちらのリンクのページより詳しく書かれています。ぜひ読んでみてください。

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