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夢にあの人が出てきた。
本当に好きなことってなんやろう?と考えてみたとき。
好きなことはきっと本当にしんどい時でもそれをしたくてうずいてしまうもので、でも時に憎たらしくって。
きっと子供の頃からずっと好きだったモノだったりして。
一番好きなことって一番大事な人に一生懸命説明したいもので。
子供の頃はお母さんで、大きくなったら自分が好きな人が頭に浮かぶのかな。
楽しかったこと、好きなもの、驚いたこと、いろんなあれやそれを真っ先に伝えたい人ができたらそれはもう立派に恋しとるで君。
先月放送された薬師丸ひろ子さんが出演していたBSプレミアムの「The Covers」をやっと見ることができたのやけれど、それは想像以上にインパクトが大きく次の日にも影響が出てしまったのです。
薬師丸ひろ子さんが好き。
番組の中で薬師丸ひろ子さんが吉田美奈子さんのアルバムFLAPPERの中から、おそらくナイアガラレーベル随一の知名度を誇る夢で逢えたらをカバーされていました。
曲が始まる前に薬師丸ひろ子さんは夢の中でも思い続けていられるって素直に素敵だと曲への思いを語り、
曲が終わりにリリーフランキーさんが
人と別れるのが怖くなくなる…
あって喧嘩ばかりしているよりは夢で会ってるくらいの方が幸せ…
引用:NHK BSプレミアム『The Covers』
「薬師丸ひろ子 歌手活動35 周年スペシャル」放送より。
とまとめたのでした。
今はもう会えない人が夢の中でも出てくることは多々有ります。
前日に辛いことがあってもなくても、すごく幸せで充実した日常を送っていても突如夢の中でふんわりと僕に会いに来ることがあります。
変わらずに好きで、今でも何かの拍子で思い出す子がいます。
おいしいコーヒーを飲んでいる時やったり、東京の街を歩いてる時やったり、
夢の中でその子はなぜか日本一!とうたわれるジョイフル本田のお客様カウンターで働いていたのでした。
最後は仲わるくさよならしたのやけれど夢の中では、
「お互い元気そうやん!」と一言だけ、笑うだけでなかなか次の言葉が出ず…
最後に会った日の姿と違って、夢の中で会ったその子は日焼けしてなくて、疲れた顔をじゃなくて、室内の仕事なのか眩しい蛍光灯に照らされ白い肌になっていて、歯も真っ白になってて、すごく清潔感いっぱいの姿で。
タバコも酒もやってた子で歯がヤニで汚れてたのも覚えていて、でもいつの間にか禁煙していて、なんで禁煙したのやろうって、もしかして?って勘ぐったり。
あっ連絡先聞きたい、教えたい、毎日、東京で今は楽しくやっていることもっと話したい!嘘でも楽しくやってるって虚勢張っときたい!って思ってたところで目が覚めてしまいました。
少し前から力強く咲いている金木犀。あいつのせいなのかもしれない。
節目節目でかかる曲がある気がします。
僕は毎年9月が1年の中でも最も活動的になります。
夏の終わりにした旅の寂しさを覚えていたり、とかくセンチメンタルになりがちな月。
匂いはやっぱり記憶に密接している。
今朝NHKFMを聞いているとNHKみんなの広場 ふれあいホールで今月の5日に収録されたNHK-FM「ライブビート」の公開録音で歌う柴田聡子さんの声が流れてきました。
ノーチェックだったのでびっくり。すごく嬉しかった。
「梅子と僕」の連載を旧ブログで始めてすぐの頃、ブログの読者の方に
「画伯、知ってるやろうか?好きかもしれないから聞いてみるといいよ。柴田聡子でパソコン検索してみ!」と教えてくれた方がいました。
初めて聴いた曲はカープファンの子という曲でした。
カープファンの子に出会った衝撃
あの時の衝撃はすごかった。
なんてえげつないことを延々と、そして可愛く歌う人なんやと。驚きました。
それから半年ほど経った頃、僕は学生時代の友人と四国旅行をしていました。
びっくり、四国の電車の中で柴田聡子さんにばったり会ったのです。
ちょうど柴田さんはその日にあった西ヶ方盆踊りの夕べ 前夜祭 〜柴田聡子のびのびギターコンサート〜というライブのために電車で会場に一人向かっていたのでした。
その時の事はすごく鮮明に覚えていて、柴田さんはびっくりするくらい身軽で、ギターと小さなカバン、麦わら帽子だけの出で立ち。そして分厚いノートを携えて電車の中で座席を探していました。
きっと詩作や控えるライブのためのレシピがぎっしりと書き込まれたノートだったのだと思います。
どことなく僕のなかにぼんやりとあった、Joan BaezやBob Dylanがワシントスクエアパークにおったらこんな感じだったのやろうという想像の中の60年代のアメリカの若者、フォークに傾倒していた若者、そんなイメージにも似た身軽さ、飄々とした姿はとてもカッコよく僕の目にうつったのでした。
僕が仲の良かったアメリカ人の子もよくノートを携えて行動していて、頻繁に何かを書き込んでいたのでした。
2013年10月15日に名古屋のブラジルコーヒーで行われたライブには友達とjubilee GALLERYで展示をしてくれたDaniellaさんも連れて行ったり。
ちなみに西ヶ方盆踊りの夕べ 前夜祭 〜柴田聡子のびのびギターコンサート〜のライブで柴田さんは中島みゆきのこの世に二人だけをカバーされていました。すごくわかってらっしゃる、すごくいい選曲。美大を卒業されている柴田さん、この世に二人だけに出てくるキャラクター達に何かしら感じるものがあっての選曲だったのでしょうね。
いつか柴田さんのカバーする中島みゆきの「ミルク32」も聞いてみたいなと妄想しています。
Joan BaezとBob Dylanと柴田聡子
これからの日本の詩を担っていくのは柴田聡子さんだと思っています。
高校生の頃、Parson’s School of Designにデザインの学部の面接に行った際に面接官の方に僕はこう言われました…
「もうデザインはだめだよ。すごくいいものがいっぱいあって、私や君が頑張らなくてもいいんだ。選べるもの、選べばいいじゃないか。君のファインアートの活動は光るものがある、そっちで頑張るべきだ。うちの学校には来たらダメだよ。僕は応援できない。」
とすごく正直に僕に話してくれた先生がいました。
その後School of Visual ArtsやPratt Instituteなども受け、ニューヨークで進学する!と思っていたのですが最後にふと気が変わりロンドンのGoldsmiths Collegeに僕は進学したのでした。
その頃のことを思い出しながら、よく懐古主義について、ポピュラー音楽について考えることがよくあります。
今の音楽より昔の音楽のほうがいい、もう世の中にいい音楽が出揃っていると、中学生の子達でも言ったりしています。
果たして本当にそうなのやろうか?昔出た音楽の素晴らしさはもちろんあるのやけれど、これから先いいものが出てこないって寂しくないかい?
Joan BaezがBob Dylanのことを振り返り歌った曲にDiamond and Rustという曲があります。すごく有名でJudas and Priestもカバーしています。笑
Joan BaezはDiamond and Rustの曲の最後のほうで同業者でもあったBob Dylanに対してあなたは言葉を操るのが上手ねと毒づく感じを匂わせた歌詞を歌っていたり。
でもそこも少し可愛かったりする曲です。
皮肉にもJoan Baezに言葉を操るのが上手と言われたBob Dylanはノーベル文学賞をとったり。失恋の歌のような、未練のようなものもチラリと見えたり。
でも間違いなくJoan Baezが書いたとわかる等身大のジャーナルのような歌詞で。
柴田聡子さんは言葉を操るのが本当に上手で、まだまだこれから先の未来もずっと新しい、素晴らしいものが生まれるんだろうなって期待をもたせてくれる人です。
柴田さんの最新アルバム「愛の休日」のなかに「遊んで暮らして」という曲が入っています。
カープファンの子の中に出てくる子と同じ子かは分かりませんが、幾分成長した女の子が歌われています。
カープファンの子の中で出てくる子は、僕のイメージの中では少しやきもちや嫉妬心を持っている女の子で、けどハツラツとしていて少し恋愛に前向きになれるしなやかさが残っている20代後半って感じ。
「遊んで暮らして」の中に出てくる子は、月日の流れを意識しはじめた、女性性をちょっぴり意識して毒づいてみたり、女の子から女性になった主人公。
柴田さんが2013年のライブでカバーされた中島みゆきさんの「この世に二人だけ」に出てくる女性に近い年齢かもしれないですね。
「ミルク32」に出てくる女性よりは年下かなと想像しています。
あの曲は自分がかつて好きだった男の人がいつの間にか強いお酒を飲むようになっていて、月日の流れを少し憂いげに歌い上げた曲。
あの曲に出てくる女性はきちんと大人になっていて、けれどまた始まる明日のために家に帰ろうと思いながらも雨降る夜を言い訳にもう少し話を聞いてもらいたいという本音と弱さをさらけ出していたり。
柴田さんの歌詞にも、ぼやいたり、毒を吐いたりする子が出てきます。えげつなかったり!
けれどさらりとしてるとこもあって。
やらかく、けどとんがってて
「遊んで暮らして」の中に出てくる子は、
いくつか恋を経験して、恋もやけれど社会の中での自分のアイデンティティ、立ち位置のようなものをもう少し意識し始めた女の子に育っている。
でもカープファンの子にも似た情熱もきちんと持った女の子、でも歌詞が進むにつれて大人になって身につけた冷静さも見せてくれるのでした。
どことなく川上未映子さんの「先端でさすわさされるわそらええわ」の表題作書き出し部分に出てくる女性や泉まくらさんの「Balloon」に出てくる女性が共通して抱えているフラストレーション、僕では拾えない一流の作家/詩人/アーティス達だから上手に拾えた言葉が使われた詩の世界。
柴田さんの作る歌は、自分自身の事、等身大の歌詞なのかもしれません。
別れの予感
柴田さんが以前出演された2015年11月20日放送のTBSラジオsoundavenueの中でテレサテンさんの「別れの予感」という曲を番組の最後に紹介されていました。
さよならのために生きてるのかなぁ?愛せないほど愛すってどういうことじゃ?と自問自答しながらこの曲への思いを語っていらっしゃいました。
奇しくも先ほど紹介したJoan BaezのDiamon and Rustとテレサテンさんの「別れの予感」、よく似た雰囲気の曲だと僕は思っています。
きっと柴田さんは、言葉を紡ぐだけではなく、言葉を拾う、用例採集のような作業もとても上手なのでしょうね。
言葉を使って何かを生み出すことばかりではなく、拾っていくこと、人の言葉に真剣に耳を傾け共感する大事さ、人の気持ちに対して丁寧に自分の気持ちに丁寧に。
僕も心がけていきたいと思いました。
画伯
Recommendation…
薬師丸ひろ子さん/Best Songs 1981-2017〜Live in 春日大社〜
Best Songs 1981-2017〜Live in 春日大社〜 (初回限定盤A)
川上未映子さん/先端で、さすわさされるわそらええわ
泉まくら/卒業と、それまでのうとうと