うめちゃんからの手紙 2017 No.162

うめちゃんからの手紙 2017 No.162

金木犀の花もいつの間にか散っていた。

うめちゃんからの手紙 2017 No.162

今日は授業の後マリちゃんとはるちゃんをつれ大急ぎで久松町までほうきで飛びました。
日本橋周辺を吹奏楽部の子たちが演奏しながらマーチングしていくという事だったのでカメラを持って聴きに行ってきました。

中学生の頃に父に連れられ宝塚市の中山五月台中学校の演奏を聴きに行った事があるのですが、ぐっと懐かしさがこみ上げてきました。
とてもすばらしいなぁと、同じ中学生なのにすごい子達やなぁと驚いた事を鮮明に覚えています。
関西では吹奏楽部が熱く、特に兵庫県にすごい!と思う学校が多くある気がします。

母から先日送ってもらった中に入っていた、少し遠くが撮影できる90mmのレンズも試す事ができ、良い写真も何枚か撮る事ができたと思います。
とても素晴らしい演奏を聴く事ができ楽しかったです
ずっと聴き続けたかったのですがアルバイトもあるので急いで切り上げ午後4時には出勤しました。
マリちゃんはアルバイト先が人形町で寮が両国にあるので日本橋からはどちらも近くて便利です。

今日は天気も良く、神田では古本まつりもあり都内で写真を撮ってまわるにはとてもよい1日だったのではないしょうか。

今晩は昨日実家から届いた荷物の中に入っていた復刻された父の本についてお話ししようと思います。
父の絵本の中で父が重版される事を長く拒んでいた本があったのですが、先日レイアウトと文字組みなどに少しずつ変更が加えられたものが復刻版として出版されました。

父が描いている絵本のシリーズに「おさんぽ」というものがあるのですが、このシリーズの前章と世間では解釈されている一冊です。

インターネット上に無許可でスキャンされたものなどが公開されていて、父の本を出してくださっている出版社の方からも違法に複製されたものでも必死に読みたいと思ってくれてくださる読者の方がいるのだからどうせ読まれるならきちんしたものをうちからもう一度出そう!と提案され、復刻が決まったそうです。

加えて、初版本の文字は今の感覚ではとても小さく、絵本としては読みにくかったので、新しいものはオリジナルに比べて大きなサイズに拡大されています。

さてこの本の内容なのですが、父の出している「おさんぽ」シリーズとちがいもう少し父の実体験や思い出を赤裸々に綴った本ではないかと私は思っています。

「おさんぽ」シリーズの主人公はいつも歩いている女の子に思われがちですが、女の子が主人公だとは明言していません。

父は主人公、脇役、勧善懲悪といった一般的な価値観を絵本には持ち込みたくなかったと語っていて、そのこだわりもあり今回の復刻に対しては懐疑的だったのです。
ぼんやりと登場するキャラクターたちの散歩や会話をする姿が楽しげだなと伝わるだけでも十分だと父は言っています。
それでも世間ではかなり哲学的にいろいろな考察がされています。

復刻された本は主人公の男の子がひどい失恋を経験するところから始まります。

ずっと性別も年齢もわからないお互いの事を”君の味方”と”遠くに住む友達”と呼び合うペンパルと主人公は何年も文通を続けています。

男の子は失恋の悲しさを手紙にしたため”遠くに住む友達”に送ると、返事の手紙の代わりに一本のカセットテープが届きます。

そのカセットテープを聞きながら主人公の男の子の散歩が始まります。

散歩の道中、楽しかった日のことや悲しかった事を思い出していく描写がぎっしりと詰まっていて、父の他の作品と比べてしまうとかなり毛色が違い厳しい批判や、逆にすごく大好きだという熱いコメント、いろいろな意見があるのも理解できます。

私も本音ではなぜこんなにも失恋の悲しみを、辛さを読者と共有する事に父は能力を使ってしまったのかと読み始めは思っていました。

でもこの本の最後にはとても美しい結末が待っていて、きっとこの結末をあえて作ったことですごく愛してくださる読者の方もいるのではないかと私は思っています。

少しだけ内容を紹介させていただくと…

主人公はずっと愛していた女の子との思い出を長い間引きずり、ずっと晴れない気持ちで日々を過ごします。
髪の毛の色、口癖、匂い、歩くスピード。
散歩をしながらいろいろなことを思い出し泣きそうになってしまうのです….

少し割愛しますが、その後に続く「おさんぽ」の主人公の女の子と男の子は散歩の途中に出会いぎゅっとハグをしてもらいます。

その時、男の子の頭からずっと好きだった女の子の匂いや、音、いろいろな記憶がするするとこぼれ落ちて川まで転がり流れていってしまうのです。(ここのシーンの挿絵がすごく綺麗で私が好きなページです)
男の子は前の彼女との記憶が流れていってしまわないように一生懸命追いかけるのですが、途中でハグをしてくれた女の子のことを思い出し記憶を追いかけていた足を止めます。

そしてハグをしてくれた女の子のところに戻ってきた男の子は「君が金木犀の匂いと一緒にやってきたものやから、大事な匂いを忘れてしまったよ」とはにかみながら伝えると、
「おさんぽ」シリーズに出てくる子にそっくりな女の子は「どうだった?私はいい匂いがしたでしょ。これからコーヒーの匂いも確かめに行かない?きっといい匂いがすると思うの。」と言い、二人で喫茶店まで歩き始めるところで物語は終わります。

ファンの方達の中では文通をしていた相手の子が会いに来てくれたのだという解釈をしていたり、中には未来からやってきた娘が父親の応援にやってきているというSFちっくな解釈をしている人などいろいろな解釈があり面白いです。

父は恥ずかしかったりいろいろな思いがあり復刻を渋っていたのだとは思いますが、復刻された本をアルバイト先の女将さんに献本したらとても喜んでいただけたので、娘としてはとても誇らしく思えました。

失恋した後も大事にしていた記憶が新しく出会ったワクワクでいっぱいの女の子の力強いハグでマヨネーズの瓶を絞るようにこぼれ落ちてしまう、ポエティックやけれどシャレの効いた父らしい絵がとても好きです。

失恋は悲しいのやろうけれど、新たにワクワクもきっとやってくるはず、忘れてしまう匂いもあるかもしれない。
けれど、世界にはもっと楽しい匂いもあるのだろうなと、前向きな気持ちにさせてくれるお話しです。

大好きな父の本についてついアツく語ってしまいました。
おやすみなさいませ。

うめこ


今日の一曲

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John Lennon – LOVE (Old Rec 1970)

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