画伯の雑記 – 2020年6月16日 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

時々思い出してはメーカーが配布しているデータシートを再読してみる。

FM3AとAI Nikkor 35mm F2SでEastman Double-X 5222を試す。
有名カメラ雑誌が休刊するというので先日買ってきました。
モノクロとカラーで合計68本のフィルムを使いテスト撮影を行い比較するという記事でした。
読み始めてすぐ気になってしまったのがモノクロフィルムはすべてスーパープロドールで処理したという記載でした。
KodakのTri-Xの項目に至っては”粒状性もこんなに細かかったか?と驚いてみる。定番フィルムも時代に合わせて少しずつリファインされているのかも。”と綴られていました。
たくさんのモノクロフィルムを集めておいてこれは勿体無いなぁと感じました。

Tri-Xの変化についてはコダック株式会社プロフェッショナル事業部から正式なプレスリリースが出ていて新旧のTri-Xが異なる事は明記されています。

コダックの白黒写真に関連する技術開発の永続性の証しとして、白黒フィ
ルムの製造が最新のコーティング工場で行われることになりました。長年
にわたりその優れた性能が実証されている乳剤に新しいテクノロジーが活
用されているため、同フィルムシリーズと比較した場合、その現像処理時間
が若干異なる場合があります。しかし、新工場で生産されたコダックの白黒
フィルムは、これまでと変わりない撮影特性とユーザーから評価されてき
た高い品質を保っています。

コダック配布資料のー注意事項ーから引用)

また富士フイルムのNEOPAN ACROS 100 IIと販売終了になった旧モデルとの比較コメントも綴られているのですが…
“国産ブランドを代表するNEOPAN ACROS100が復活を遂げてここにとどまっている…”と書かれている一文もあり驚きました。
現在販売されているNEOPAN ACROS 100 IIはフィルムの箱自体にMADE IN UKと書かれています
製造工場も変わり、フィルムベースの厚みも従来のモデルとは異なります、この事も富士フイルムのデータシートを見比べれば新旧の違いがわかります。
(35mmネガ、新しいものが0.134mm、以前のものが0.122mm)
ちなみにミニラボで使う富士フイルムのカラー印画紙はオランダ製の物があったりします。
もちろん逆もあって海外のメーカーのものを”日本のフィルムメーカー”が作っているものもあったり…長くなるので割愛しますが、以前から国際色豊かなのがフィルムカメラ界隈ではないでしょうか。
世界中を旅した材料と色々な国の人たちが情熱を持ってフィルムを作ってくださっていると思うとワクワクしませんか。

少し話がそれまして…
先代のアクロスの時は海外向けのデータシートにも優れた粒状性を発揮するためにミクロファインでの現像を推奨すると明記されていました。

海外だとD-76であったりHC-110の方が入手性が高いでしょうから、D-76の原液と1:1希釈、HC-110の希釈現像のデータも海外向けに富士フイルムはきちんと発信しています。
メーカーのデータシートは特別なものではありません。
誰でも公式サイトから入手する事ができます。
NEOPAN ACROS 100 IIの国内版のデータシートはだいぶ省略されていますが、上記の海外でよく使われるD-76の原液と1:1希釈、HC-110の希釈現像のデータもきちんと記載されていて、至れり尽くせりです。
なかなか全てのフィルムを各メーカー指定の処理方法で現像するのは大変だと思うのでスーパープロドールで全て処理するしか仕方がなかったのでしょう。
それでもミクロファインもKodak T-MAX DEVELOPERもまだ普通に流通しているのですからフィルムの個性を存分に引き出せていないのは勿体無いと個人的には思いました。
ADOXのフィルムも紹介しているのに意図的なのかADOX社のフィルムで最高の解像度を誇るCMS20IIが紹介されていなかったりと物足りなさも感じました。
イルフォードDELTA3200の紹介記事に至っては”実用的な感度は1600くらいか。暗部の出方が少々厳しいので一段オーバーのカットをプリント…(デイライトの場合。)”と書かれていてました。
それなのにKodak T-MAX P3200は800で撮影している一貫性のなさ…
これについてもイルフォードが正式にデータシートを公開し、メーカー純正現像液で液温20°Cで処理した場合、感度は1000だとキチンと明記しています。

DELTA 3200 Professional has an ISO speed rating of 1000/31° (1000ASA, 31 DIN) to daylight.
The ISO speed was measured using ILFORD ID-11 developer at 20°C/68°F with intermittent agitation in a spiral tank.(公式サイトテクニカルインフォメーションより引用)

各メーカーは私たちの知らないところで丁寧に一生懸命写真文化が続くようにご尽力してくださっていると思います。
日頃よりイルフォード、オリンパスライフサイエンスが配布してくださっている資料には本当にお世話になっています。

モノクロ現像をされる方はイルフォードの公式サイトの資料が本当に役立ちます。是非!

雑誌や専門書で有益な知識を得る事ができる場合もありますが、まずは使用しているカメラやフィルムのメーカー公式サイトの資料を読んでみましょう。
全てではありませんが古いカメラや販売終了したフィルムの説明書もPDFできちんと公開されています。

色々な現像液、現像テクニックが試せるのがモノクロフィルム自家現像の醍醐味です。
難しのではなく楽しみ方がたくさんあって少し取っつきにくいだけです。
この現像液だったら大きく外さないというのは確かにあるかもしれませんが、そこで止まっていては”もったいない”と思います。
どの趣味でも言えることかもしれません、あまりに情報が多いと迷いがちですが振り出しに答えがポッと置いてあるのに遠回りしている事が多いのかもしれません。
これは自分もたくさん反省するところがあります。

僕が書く事を含め他人の経験やデータを全て鵜呑みにしてはいけません、結局現像にしても作業時の癖等や色々な細かな違いが結果に表れます。
あなた自身の好みや撮影スタイル、好きなお天気からあったフィルムと現像方法を見つけてください。
他人の経験や評価をあてにしてはダメです、自分で楽しみ見つけていく事が大事です。

さて長々と書いてきた事と矛盾しますが、いまだにD96現像液が手に入らないので今回もEastman Double-Xを指定薬品ではないミクロファインで現像してみました。
現時点ではD-76の低温現像、ミクロファイン、D-76の原液現像の順番で現像結果を気に入っています。


ミクロファインでモノクロ自家現像 / Eastman Double-X / 作例 24枚

使用したカメラ:Nikon FM3A / AI Nikkor 35mm f/2S
使用したフィルム:Eastman Double-X

Dev 20°C 12min30sec, Stop Bath 2min , Fixer 6min, Qucik Wash, Photo Flo (同一現像液で9,10,11本目)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

 FM3A AI Nikkor 35mm / Eastman Double-X 5222 (ミクロファイン)

今回は作例の前に長ったらしく愚痴のような文章が続いてしまい本当に申し訳ありませんでした。
人が”販売する情報”を鵜呑みにせずご自身で是非経験してほしいという僕の思いが少しでも伝われば幸いです。
恵まれた事に今日でも多種多様なフィルムと現像用品を買う事ができます。
予算と時間に制限はあるかもしれませんが、だからこそ人の見聞録だけかじって躊躇するのではなく、ご自身で楽しんでみてはいかがでしょうか。

画伯


今回使用した現像液です。

今回使用した現像タンク

パターソンの現像タンクが好きで、PTP117、PTP115(2つ)、PTP116と4つ持っています。
35mmが1本だけ現像できる最小サイズのPTP114というものもあるのですが、実用的なのは35mmが2本現像できるサイズのPTP115くらいからだと思います。
1Lで薬品を作られる方はPTP116、35mmが3本もしくは120が2本のタイプがちょうど良いかもしれません。

Copyrighted Image

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。